「汚れた英雄」のレースシーン
草刈正雄が主演を務めた本作は、全日本ロードレース選手権を舞台に、孤独な天才ライダー北野晶夫の戦いと野望を描いた日本映画の金字塔です。 最大の見どころは、なんといっても臨場感あふれる大迫力のレースシーンでしょう。
ヤマハ発動機の全面的な協力を得て、スポーツランドSUGOや鈴鹿サーキットで実際のレースさながらの実走ロケが行われました。 当時の技術では非常に画期的だったオンボードカメラを駆使し、ライダー目線のローアングルから捉えられた映像は、観る者をサーキットの熱狂の中へ引き込んでくれます。 アスファルトすれすれを猛スピードで駆け抜ける迫真のカメラワークは、今観ても新鮮な驚きを与えてくれるはずです。
排気音の轟音とともに、当時のモータースポーツが持っていた熱気がスクリーンから生々しく伝わってきますね。
『汚れた英雄』に登場するバイク
劇中で主人公の北野晶夫がサーキットを駆け抜ける相棒として選んだのは、当時の最高峰クラスで活躍していたヤマハの2ストローク500ccマシンです。 映画の設定上では個人で参戦するプライベーターのマシンとして描かれていますが、ベースとなっているのは市販レーサーのヤマハTZ500などと言われています。
それをワークスマシンであるYZR500風に美しく仕立て上げ、白と青の鮮やかなカラーリングを施した車体が、多くのバイクファンのこころを掴みました。 現代の4ストロークエンジンとは異なる、2ストローク特有の甲高く突き抜けるような排気音も、この映画を彩る重要な要素の1つでしょう。
当時の最高峰マシンの荒々しいパワーと、それを巧みに操るライダーの張り詰めた緊張感が、銀幕を通して私たちにひしひしと伝わってきますね。
スタントを務めた平忠彦
主人公の華麗なライディングをスクリーンに描くためには、本物のプロライダーの高度な技術が不可欠でした。 そこで白羽の矢が立ったのが、のちに全日本ロードレース選手権で3年連続のチャンピオンに輝く平忠彦です。
彼は草刈正雄のスタントダブルとして、危険と隣り合わせの激しいレースシーンを見事に演じきりました。 長身でスリムな体型が草刈正雄とよく似ていたことや、無駄のない美しく鋭いコーナリングフォームが、孤高の天才ライダーという役柄にこれ以上ないほどの説得力を与えています。
流れるようにスムーズな体重移動は、単なる代役の枠を超えて、作品全体の芸術性を一段と高めてくれる素晴らしいものでしょう。 日本のモータースポーツ界を牽引したレジェンドの若き日の走りを、この映画でじっくりと目に焼き付けてみてくださいね。
